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セフィシテ1
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6110
2024/06/19 14:33
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6110
※初心者だから、何もわからないよ!\(^ω^)/
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{ "lines": [ { "c": "label", "p": "1" }, { "c": "msg", "p": "…………" }, { "c": "layer", "p": { "no": "0", "src": "1566", "path": "20150602230320_b6b165bd.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "※これはBLです。お気をつけください" }, { "c": "msg", "p": "本当にプレイなさいますか?" }, { "c": "select", "p": [ { "text": "はい", "jump": "5" }, { "text": "いいえ", "jump": "1" } ] }, { "c": "label", "p": "5" }, { "c": "msg", "p": "……" }, { "c": "layer", "p": { "no": "2", "src": "266", "path": "20120818005224_72db3d07.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "序章を飛ばしますか?" }, { "c": "select", "p": [ { "text": "はい", "jump": "6" }, { "text": "いいえ", "jump": "7" } ] }, { "c": "label", "p": "7" }, { "c": "msg", "p": "~序章~" }, { "c": "layer", "p": { "no": "1", "src": "1567", "path": "20150602231921_e89a0483.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "【シドネとグランの戦の最中】" }, { "c": "msg", "p": "ルフェル「はあっ!」" }, { "c": "layer", "p": { "no": "3", "src": "1568", "path": "20150603093327_a6d02c7e.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "斬りかかってきた敵兵の剣を受け止め、首を跳ねる。切断した首から血が噴き出し、視界が赤く染まる。" }, { "c": "msg", "p": "力なく倒れていく敵兵の姿に、胸は傷まない。今行われているのは戦だからだ。" }, { "c": "layer", "p": { "no": "4", "src": "1567", "path": "20150602231921_e89a0483.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "命への尊さを語れば、やられるのは己自身。俺が斬った男のように、何も得られずに死んでしまう。" }, { "c": "msg", "p": "今回の戦では俺はシドネ側の兵だが、所詮は募集されて集まっただけの傭兵の一人だ。" }, { "c": "msg", "p": "この戦でも、傭兵がほとんどのチームとして特攻隊を命じられて、事実上の使い捨ての駒だ。" }, { "c": "msg", "p": "俺と同じ時に特攻に入った傭兵のほとんどの姿が、喧騒の中に消えていった。" }, { "c": "msg", "p": "――死んだのだろう。" }, { "c": "msg", "p": "が、俺は無駄死には嫌だと、大地を蹴った。" }, { "c": "msg", "p": "襲ってくる敵兵を斬り殺し、ひたすら大地を走る。" }, { "c": "msg", "p": "金で戦うのが傭兵なら、金で裏切るのも傭兵だ。使い捨ての駒としての自分の立場に文句は言えない。" }, { "c": "msg", "p": "が、ただ特攻隊としても働いても何も得られないのは今までの経験でわかっているから、俺は動く。" }, { "c": "msg", "p": "乱れる人間の中に、一際目立つ騎兵を見つける。声を張り上げ、指揮している男は目の前のことだけに視線が向き、横から迫る俺のことなど気づいていない" }, { "c": "msg", "p": "ニヤリと、口角が上がった。" }, { "c": "msg", "p": "(いける)" }, { "c": "msg", "p": "漠然とした確証ではなく、培ってきた経験が勝利を確証する。" }, { "c": "msg", "p": "スピードを上げると、指揮をする男の側にいた兵が俺の存在に気づいて声を上げた。" }, { "c": "msg", "p": "兵は指揮している男を守ろうと前に出て、自身の魔法で出した木々で俺を貫こうと鋭く狙いをつける。" }, { "c": "msg", "p": "指揮している男は兵を信じているのか、俺を見ようともしない。" }, { "c": "msg", "p": "それとも、金を目的に働く傭兵が剣以外に武器を持っていないと思っているのか。" }, { "c": "msg", "p": "魔法が一般的に普及していないこの時代、そんな考えがあっても不思議ではないが。" }, { "c": "msg", "p": "俺の命を奪おうと迫り来る鋭い木々に、心は乱れない" }, { "c": "msg", "p": "走るのを止め、立ち止まる。他者から見れば、大きな力を前に、ただ屈したように映るだろう。" }, { "c": "msg", "p": "が――そんなつもりは微塵もない" }, { "c": "msg", "p": "迫り来る木々を瞬きすらせずに見据え、冷静に観察をする" }, { "c": "msg", "p": "10…9…8…と、木々と自身の間の距離を図り、3となったその瞬間" }, { "c": "msg", "p": "大地を強く蹴り、ひたすら高く飛んだ" }, { "c": "msg", "p": "俺を狙っていた兵は目を見開かせるが、流石というべきだろう。すぐに方向を切り替え、俺の真下を狙って木々を急行させる" }, { "c": "msg", "p": "落下を狙って、俺を貫くつもりなのはすぐにわかった" }, { "c": "msg", "p": "が、落下するつもりなら最初から飛ぶ馬鹿はいない" }, { "c": "msg", "p": "ルフェル「終わりだ」" }, { "c": "msg", "p": "誰に聞かせるでもなく呟き、地面のない空を蹴った" }, { "c": "msg", "p": "瞬間、湧き上がった風が砂嵐を起こし、俺の近くにいた人間の目を眩ませる。木々を操っていた兵も例外でなく、襲ってきていた木々が一瞬にして消えた" }, { "c": "msg", "p": "その時初めて、指示をしていた男が俺を見たのがわかった" }, { "c": "msg", "p": "だが、流石は一軍を束ねる者だ。すぐに動揺を消し、危険を回避しようと反撃しようとする。" }, { "c": "msg", "p": "が、焦りはなかった。" }, { "c": "layer", "p": { "no": "6", "src": "1568", "path": "20150603093327_a6d02c7e.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "男よりもさきに、俺の剣が男を切り裂いたからだ" }, { "c": "layer", "p": { "no": "5", "src": "266", "path": "20120818005224_72db3d07.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "label", "p": "6" }, { "c": "msg", "p": "……" }, { "c": "msg", "p": "……" }, { "c": "layer", "p": { "no": "7", "src": "1569", "path": "20150603134339_048f6983.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "【シドネの城下町】" }, { "c": "msg", "p": "グランとの戦いで勝利を治め、領土の一部を奪ったシドネの城下町はお祭り騒ぎだった。" }, { "c": "msg", "p": "昼間から酒を煽るものもいれば、ひと目も憚らず踊る者もいる。騒ぐ人々の中には、仕事中の兵士の姿もある。" }, { "c": "msg", "p": "俺は、戦で獲得した金の入った袋を腰にぶら下げて、シドネに来てから贔屓している酒屋に向かっていた." }, { "c": "msg", "p": "(しばらくは戦はないし……少し減らされたけど、金はたんまり貰ったしな)" }, { "c": "msg", "p": "金を減らされたのは、俺が斬った敵兵の中にかなり重要な立ち位置にいた男が原因だった。" }, { "c": "msg", "p": "おかげでシドネの上官に、傭兵ごときには相応しくないとか言われて功績を横取りされた。" }, { "c": "msg", "p": "まあ、譲るかわりにある程度の分け前は貰ったんだけど。" }, { "c": "msg", "p": "それに、今回のような横取りは珍しい話でもなく、よくあることだ。" }, { "c": "msg", "p": "欲をかいて目をつけられるより、金で済む内に引くのが上手い生き方だ。" }, { "c": "msg", "p": "傭兵で、功績を奪われた上に殺された人間もいる。" }, { "c": "msg", "p": "金も貰えて生きれているだけ、俺は良い方だ。" }, { "c": "layer", "p": { "no": "19", "src": "1578", "path": "20150608161916_27169f50.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "建物の角を曲がり、路地裏に出る。" }, { "c": "msg", "p": "賑やかな音が低くなっていくのを感じながら歩いていれば、前方で、大きな包を抱えた男が数人のガラの悪い男たちに囲まれていた。" }, { "c": "msg", "p": "男たちが物取りであることは一目瞭然だった。" }, { "c": "msg", "p": "表通りからあまり外れていない場所で悪事を働く男たちには、人目を気にするような様子は一切見られない。" }, { "c": "msg", "p": "今日が、いつもなら巡回をしている衛兵でさえ浮かれて仕事をサボるような日だからだろう。" }, { "c": "msg", "p": "(穏やかじゃないな)" }, { "c": "msg", "p": "今日のような日ぐらい、目の前のような光景は見たくないんだが。せっかくの良い日が、これでは台無しだ。" }, { "c": "label", "p": "10" }, { "c": "layer", "p": { "no": "11", "src": "1569", "path": "20150603134339_048f6983.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "男を助ける?" }, { "c": "select", "p": [ { "text": "はい", "jump": "8" }, { "text": "いいえ", "jump": "9" } ] }, { "c": "label", "p": "9" }, { "c": "msg", "p": "弱い者は死ぬ。ふいにそんな言葉が脳裏を過ぎった。" }, { "c": "msg", "p": "俺は踵を返し、表通りへと歩く。背を向ける一瞬、偶然振り向いたおじさんと目が合った気がした――。" }, { "c": "layer", "p": { "no": "9", "src": "266", "path": "20120818005224_72db3d07.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "…………" }, { "c": "msg", "p": "……" }, { "c": "msg", "p": "選択肢に戻る?" }, { "c": "select", "p": [ { "text": "はい", "jump": "10" }, { "text": "いいえ", "jump": "1" } ] }, { "c": "label", "p": "8" }, { "c": "layer", "p": { "no": "10", "src": "1569", "path": "20150603134339_048f6983.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "肩を竦めながら、普段と変わらないスピードで歩いて男たちに近づく。" }, { "c": "msg", "p": "腰にぶら下げてある金袋がジャラジャラと鳴り、男たちは全員こっちを振り向いた。" }, { "c": "msg", "p": "大きな包を抱えた男は一瞬、救われたかのように顔を明るくさせたが、やってきたのが若い俺だったことに気がつくと失望した。" }, { "c": "msg", "p": "全てを諦めたような顔をして、その場に崩れ落ちた。救いではないと判断されたのだろう。" }, { "c": "msg", "p": "慣れていることだったが、僅かに苦笑する。" }, { "c": "msg", "p": "町一番の美人ともてはやされた母親そっくりの顔では、確かに期待しろと言っても無駄だな。" }, { "c": "msg", "p": "物取り1「よう、兄ちゃん。腰でジャラジャラ鳴らしている物を寄越しな」" }, { "c": "msg", "p": "物取り2「綺麗な顔に、傷をつけたくないだろう?」" }, { "c": "msg", "p": "男たちはニヤリと口角を吊り上げ、下卑た瞳をしている。" }, { "c": "msg", "p": "音だけで、俺の腰にあるものがなにか察しているのだろう。男たちが盗み慣れている証拠だ。" }, { "c": "msg", "p": "ルフェル「欲しいなら取りに来いよ。アンタたちが思っている通り、金だから」" }, { "c": "msg", "p": "男たちの瞳が一斉に、獲物を定めるように細まる。" }, { "c": "msg", "p": "完全に見下しきった声で汚く笑い、服に忍ばせていたのだろうナイフを取り出して焦らすようにチラつかせる。" }, { "c": "msg", "p": "男3「すぐに金を置いていけば怪我しなくて済んだのによ、頭の悪いガキだぜッ!!」" }, { "c": "msg", "p": "男たちの一人が襲いかかってくる。" }, { "c": "msg", "p": "他の者たちは、一人で十分だと高をくくった様子で傍観を決めていた。" }, { "c": "msg", "p": "遅いかかってくる男を見つめながら、あくびが出そうになる。" }, { "c": "msg", "p": "戦場で相手する敵に比べれば、遥かに遅いからだ。" }, { "c": "msg", "p": "襲ってくる男は、そんな俺を恐怖で動けないだけだと誤解しているのだろう。" }, { "c": "msg", "p": "余裕綽々といった態度が見て取れた。" }, { "c": "msg", "p": "男3「ほらよ!」" }, { "c": "msg", "p": "男が俺の顔を狙ってナイフを振り下げてくる。" }, { "c": "msg", "p": "俺は横に身体をずらして、男のナイフを軽く避ける。" }, { "c": "msg", "p": "男3「なっ!?」" }, { "c": "msg", "p": "いとも簡単にバランスを崩す男の背中を蹴り倒し、倒れようとする男の首を締め上げ仲間の方へ向ける。" }, { "c": "msg", "p": "仲間たちは全員驚いた表情をしてこっちを見ていた。" }, { "c": "msg", "p": "俺は、俯き加減で仄暗く笑う。" }, { "c": "msg", "p": "ルフェル「この男の首折られたくなかったら、俺の前から消えろ。聞かないなら、この男を片付けた後でアンタたちも片付ける。人間の首って簡単に折れるんだぜ?」" }, { "c": "msg", "p": "腕の中で苦しげにもがいていた男の顔が、紙のように真っ白になる。" }, { "c": "msg", "p": "仲間の男たちも、怯えたように後ずさった。" }, { "c": "msg", "p": "追い詰めるのは得意でも、追い詰められた後に発揮する根性はないのかと呆れる。" }, { "c": "msg", "p": "ルフェル「どうする?」" }, { "c": "msg", "p": "演技めいた仕草で首を傾げ、畳み掛けるつもりで10…9…と数を数える。" }, { "c": "msg", "p": "瞬間、仲間の一人が背を向けたのを合図に全員がこの場を逃げ去っていく。当然、俺の腕の中にいる男は置いていけぼりだ。" }, { "c": "msg", "p": "心底呆れながら、腕の中の男を解放した。男は上体を折り曲げ、ゲホゲホと激しく咳き込んでいる。" }, { "c": "msg", "p": "が、呼吸が落ち着いてきて自分が置かれている状況を思い出したのだろう。男の身体が激しく震えだす" }, { "c": "msg", "p": "俺はわざと大きくため息を吐いた。" }, { "c": "msg", "p": "ビクリッと、男の肩が飛び跳ねる。" }, { "c": "msg", "p": "ルフェル「行かないの?」" }, { "c": "msg", "p": "男3「ひっ……!」" }, { "c": "msg", "p": "男は瞬時に立ち上がり、転げそうになりながら脱兎の如く逃げた。" }, { "c": "msg", "p": "ルフェル「大丈夫か、おじさん?」" }, { "c": "msg", "p": "明るく声を掛ければ、愕然としていたおじさんがはっとしたように俺を見る。" }, { "c": "msg", "p": "暫しの間、おじさんは警戒するように俺を見つめていたが、安全だと判断したのだろう。こくこくと何度も頷く。" }, { "c": "msg", "p": "俺はおじさんに近づき、手を差し出す。" }, { "c": "msg", "p": "ルフェル「つかまって」" }, { "c": "msg", "p": "おじさん「あ、ああ……すまないな坊主」" }, { "c": "msg", "p": "おじさんは立ち上がると、心から安堵したように深い息を吐いた。" }, { "c": "msg", "p": "ルフェル「おじさん、あいつらはもう来ないと思うけど早く家に帰った方がいい。衛兵が仕事をサボっている今日は物騒だからな」" }, { "c": "msg", "p": "おじさん「……みたいだな。ここまで来れば安全だと思っていたんだが、こんなところにもあんな奴らが彷徨いているとは思わなかったよ……坊主は強いな」" }, { "c": "msg", "p": "ルフェル「こんな生りしてるけど、長く傭兵やってるからね」" }, { "c": "msg", "p": "そう言えば、おじさんは驚いた声を上げた。まさか、俺みたいなのが傭兵だとは思ってもいなかったのだろう。" }, { "c": "msg", "p": "が、すぐに納得したように、そうかと笑う。" }, { "c": "msg", "p": "おじさん「商売柄、傭兵を見ることは多くあるが、坊主みたいな綺麗な傭兵を見るのは初めてだ。助けてくれてありがとな」" }, { "c": "msg", "p": "ルフェル「いいって。困ったらお互い様だろ。それに、おじさん見捨てて飲んだ酒は不味い」" }, { "c": "msg", "p": "茶化すように言えば、おじさんは目を丸くさせて、すぐに心底面白そうに笑う。" }, { "c": "msg", "p": "俺もつられて笑っていれば、おじさんはそうだと、大きな包から何かを取り出し始めた。" }, { "c": "msg", "p": "暫しの間おじさんを見つめていれば、お目当てのものが見つかったようだった。" }, { "c": "msg", "p": "何かを握って、俺に差し出してくる。" }, { "c": "msg", "p": "おじさん「助けてくれたお礼に坊主にこれをやるよ」" }, { "c": "msg", "p": "そう言って、拳を広げたおじさんが持っていたのは小さな赤い玉だ。" }, { "c": "msg", "p": "(飴玉?)" }, { "c": "msg", "p": "そう言えば、しばらくの間食べていなかったことを思い出す。" }, { "c": "msg", "p": "助けたことなんて大したことでもないし、気にしなくていいことだが、あげると言われたものを断る方が失礼だろう。" }, { "c": "msg", "p": "笑顔でお礼を言って受け取ろうとすれば、おじさんがただしと言った。" }, { "c": "msg", "p": "俺は手を止めて、おじさんを見る。" }, { "c": "msg", "p": "おじさん「これは飴玉でも、食べ物でもないから絶対に食べるなよ。これは魔法具で、一度だけだが持ち主が願った場所に飛ばしてくれるものだ。きっと坊主にも役たつだろう」" }, { "c": "msg", "p": "ルフェル「魔法具!?そんな高価な物貰えないよ。本当に大したことじゃないし」" }, { "c": "msg", "p": "慌てて遠慮すれば、おじさんは俺の手に強引に魔法具を握らせてくる。" }, { "c": "msg", "p": "魔法具は、魔法が一般的に普及していないこの時代、どんな程度の低いものでもひと月は暮らせるほどの高価な品物だ。" }, { "c": "msg", "p": "高額である、魔法の教育を受けていない者でも楽して魔法が仕える便利なものである。" }, { "c": "msg", "p": "見たことは何度かあるが、一度も手にしたことはない。" }, { "c": "msg", "p": "困惑しておじさんを見れば、おじさんは人の良い顔で笑う。" }, { "c": "msg", "p": "おじさん「俺は魔法具専門の店をやっている。今日は各国で仕入れたものを持ち帰るとこだったんだ。こうして生きれてるのも坊主のおかげだ。命の代価と思えば、これ一つぐらい安いってことよ」" }, { "c": "msg", "p": "ルフェル「おじさん……うん、分かった。ありがとうおじさん。大切に使わせてもらうよ」" }, { "c": "msg", "p": "おじさん「ありがとよ、坊主」" }, { "c": "msg", "p": "お礼を言うのは俺の方だと言おうとしてやめた。" }, { "c": "msg", "p": "満足そうに頷くおじさんにそれを言うのは、水を差すような行為な気がしたからだ。" }, { "c": "msg", "p": "俺は、おじさんに貰った魔法具を大切に握り締める。" }, { "c": "msg", "p": "腰の金袋よりも、貰った魔法具の方が重みを感じた。" }, { "c": "msg", "p": "おじさん「なあ、坊主。ここ数年噂を広めてる三国の話は知ってるか?」" }, { "c": "msg", "p": "ルフェル「三国?うん、知ってるけど……」" }, { "c": "layer", "p": { "no": "12", "src": "1586", "path": "20150608171103_655ed68b.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "北には、砂漠の国【シーク】。南には、緑の国【エジェル】。西には、小さな島国【倭国】がある。" }, { "c": "msg", "p": "どの国も、勇猛で知られている賢王が治めており、三国は長い間牽制してあってきた。" }, { "c": "msg", "p": "最近では、倭国とシークの戦も実しやかに囁かれてきていた。" }, { "c": "msg", "p": "代々争いを好まない王が治めてきたエジェルは、戦をしない立場を保ち続けているが、戦に立ち上がるのは時間の問題となってきている。" }, { "c": "msg", "p": "理由は、エジェルの領土内にある、とある森の存在だった。" }, { "c": "msg", "p": "【カタストロフ】と言われる壮大な森は、昔からエジェルの城壁として背後を守ってきた。最近では、一度入れば生きては戻れないという迷いの森として有名である。" }, { "c": "msg", "p": "この森の存在がかなり厄介だった。昔は旅人が安全に通っていた森が、数年前からまるで生き物のように人を呑み込み始めたのだ。" }, { "c": "msg", "p": "倭国がシークの国へ行くには、かなり危険な道とエジェルのある道に限られる。当然、倭国はエジェルの王の許可を取り通ろうとしたのだが、カタストロフに阻まれ続けてきた。" }, { "c": "msg", "p": "だからこそ、シークと倭国の戦が囁かれ続けてきた今も実際に戦が起こっていない。" }, { "c": "msg", "p": "シークに限っては、何故かは分からないが、エジェルを通ろうとすら思っていないようだ。" }, { "c": "msg", "p": "倭国は、近年ではカタストロフを焼き払うことを思案しているようだった。実行に移っていないのは、エジェルの王が拒んでいるからしいが、それがいつまで続くか。" }, { "c": "msg", "p": "そんな複雑な国問題もあり、倭国が強硬手段をとれば、エジェルの戦をしない立場も怪しいのである。" }, { "c": "msg", "p": "長年傭兵として旅を続けてきたが、その三国の内の一つにすら行ったことはない。数多くの列強国が恐れる大国のあまり、俺みたいな一傭兵には、戦の機会に恵まれそうにないからだ。" }, { "c": "layer", "p": { "no": "18", "src": "1578", "path": "20150608161916_27169f50.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "が、この三国がどうかしたのだろうか。" }, { "c": "msg", "p": "疑問に思えば、おじさんは名案を思いついたような顔をしている。" }, { "c": "msg", "p": "何故だろうか。胸が騒ぎ始め、嫌な予感がした。" }, { "c": "msg", "p": "おじさん「信用のあるところから仕入れた情報だ。近く、必ず三国のどれかが戦を始める。かなり大きな戦になるはずだ。坊主にも野心があるなら、さっき俺が渡した魔法具を使って三国のどれかに行ってみたらどうだ?」" }, { "c": "msg", "p": "あまりに壮大すぎる話に言葉を失う。" }, { "c": "msg", "p": "三国のいずれかで戦う。そんなことを一度も考えなかったわけではないが、おじさんが言っていることは無茶すぎる話だ。" }, { "c": "msg", "p": "いずれも三国は、長い歴史の中で傭兵がいたという話は聞いたことがないのだ。それだけ自国に誇りがあり、他力を借りないでいれるだけの強さを持っているのだ。" }, { "c": "msg", "p": "戦に参加させてくれるはずがない。" }, { "c": "msg", "p": "どれかとはいえ、三国が戦をやるということには驚いたが、俺には関係のない話だ。" }, { "c": "msg", "p": "ルフェル「う~ん、俺も出来ればそうしてみたいけど、なんせあの三国だからな。俺みたいな傭兵じゃ無理だと思う」" }, { "c": "msg", "p": "笑って言えば、おじさんはなんでもないことのように言った。" }, { "c": "msg", "p": "おじさん「坊主の実力次第になるが、城への伝手がある。いずれの城でも、出入りしている商人仲間がいるんだ」" }, { "c": "msg", "p": "そう言って、おじさんは三国全部の商人仲間のことを説明する。" }, { "c": "msg", "p": "呆然と説明を聞いていた俺だが、次第に目の前のおじさんが何者なのか興味が湧いてくる。" }, { "c": "msg", "p": "もしかしたら俺は、とんでもない人を助けてしまったのではないのだろうか。" }, { "c": "msg", "p": "おじさん「ちっとお節介すぎるかもしれねえが、気が向いたら使ってみてくれや。じゃあな、坊主」" }, { "c": "msg", "p": "照れたように頬をかいて、おじさんは俺の返事を待たずに去っていく。" }, { "c": "msg", "p": "取り残された俺は、ふと手の中にある魔法具を見つめた。" }, { "c": "msg", "p": "上手くいけば、戦に参加できる。" }, { "c": "msg", "p": "そして――見つかるかもしれない。" }, { "c": "msg", "p": "旅の目的である、生涯をかけて仕える俺だけの王が。" }, { "c": "msg", "p": "幼い頃から憧れて、旅をしてからずっと探していた。" }, { "c": "msg", "p": "四年かけて見つからなかったものがようやく、見つかるかもしれない。そう思ったら、急激に身体が熱くなり始めた。" }, { "c": "msg", "p": "初めて戦に出た時のような高揚感に、ゴクリと唾を飲んだ。" }, { "c": "msg", "p": "ぐっと、魔法具を強く握る。" }, { "c": "msg", "p": "このまま、今までと同じように旅を続けても”王”が見つからないことは分かりきっている。" }, { "c": "msg", "p": "それなら。" }, { "c": "msg", "p": "無謀で危険だと分かっていても、賭けに出る方がましだ。" }, { "c": "layer", "p": { "no": "13", "src": "1584", "path": "20150608165957_a7b1beeb.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "【シーク】は、領土一帯を砂漠が占め、代々、太陽神の名のもとに戦に生きてきたためか、好戦的な民が多いい。" }, { "c": "msg", "p": "建国王の時代から、恐怖することは太陽神に対する恥という教えがあるため、恐怖心を嫌悪する。" }, { "c": "msg", "p": "そんな屈強な精神で生まれ育ってきた民が唯一畏怖する存在が、彼らの王だ。" }, { "c": "msg", "p": "冷酷無慈悲で語り継がれてきたシークの現在の王は、ジュリファス・レーイ・ブリシュリアという。" }, { "c": "msg", "p": "他の二つよりも、他国の者を寄せつけそうになく、遥かに難易度が高そうな国である。" }, { "c": "layer", "p": { "no": "14", "src": "1585", "path": "20150608170342_382d886a.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "次に、【エジェル】は、緑豊かな国で、農作物がよく育つ肥沃な土地にある。ワインの名産地でも知られており、今では迷いの森と有名なカタストロフの持ち主である。" }, { "c": "msg", "p": "シークとは真反対の国で、争いを好まず、民も温和だ。国の人間全てが家族であるという精神国で、団結力が強い。" }, { "c": "msg", "p": "エジェルから戦を起こしたことはないが、”家族”を傷つけられれば容赦なく打ちのめすという冷酷さも兼ね備えている。" }, { "c": "msg", "p": "他の二つよりは、上手くいく可能性が高い。" }, { "c": "msg", "p": "温厚篤実で知られるエジェルの現在の王は、シリル・ルーイという。" }, { "c": "layer", "p": { "no": "15", "src": "1579", "path": "20150608163729_a17dde0e.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "最後に、【倭国】は、小さな島国だ。他の国に比べて領土が少ないが、独特な文化と団結力が強く、国としては強国の一つとして数えられている。" }, { "c": "msg", "p": "忠誠心はどの列強よりも強く、死すら厭わない姿勢は他国に畏怖さえ与えている。" }, { "c": "msg", "p": "エジェルよりは難しくなるだろうが、シークよりは望みがあるだろう。" }, { "c": "msg", "p": "真実かどうか分からないが、現国王は各国での目撃証言が絶えないことで有名だ。" }, { "c": "msg", "p": "謎の多いい現国王の名は、音無という。" }, { "c": "layer", "p": { "no": "16", "src": "1578", "path": "20150608161916_27169f50.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "layer", "p": { "no": "17", "src": "217", "path": "20120807092929_9118017d.jpg", "x": "0", "y": "0", "effect": "fadeIn" } }, { "c": "msg", "p": "ゆっくりと目を閉じて、三国のことを思い浮かべる。" }, { "c": "msg", "p": "俺が選ぶのは――。" }, { "c": "msg", "p": "……" }, { "c": "msg", "p": "……" }, { "c": "msg", "p": "【次に続く】" } ] }